グッピーは言わずと知れた最も普及している熱帯魚のひとつで、古くからネオンテトラやエンゼルフィッシュと共に、熱帯魚の代名詞として重要な役割を果たしてきました。
熱帯魚はグッピーに始まりグッピーに終わると言われてきましたが、毎週のように新種が紹介される現在においても、この言葉はなかなか的を射ているように思います。
さて、グッピーに始まると言いますが、グッピーが他の熱帯魚に比べて丈夫かと言うとそうでもありません。
むしろ、ややデリケートな部類に入るのではと思えることさえあります。
特にシンガポールで特殊な飼育水により養殖された大型で派手な輸入グッピーは、できるだけ大きな水槽にきちんとした濾過装置を取り付け、ゆったりと飼ってあげるべきでしょう。
グッピーを飼育するにはごく一般的な熱帯魚飼育セットで問題ありませんが、ポイントは適度な水の流れと十分な広さ、そして清潔な水です。
グッピーは活発に泳ぐ熱帯魚なので、60センチくらいの水槽があると理想的です。
また、30センチの水槽でも飼育できますが、グッピーはとにかくよく殖えますので、30センチの水槽ではすぐ手狭になってしまうでしょう。
グッピーにとって水換えはとても重要です。
水換えを怠るとみるみる動きに冴えがなくなってきます。
とにかくこまめに換水して、常に真新しい水で飼育するぐらいの気持ちで管理すると調子が良いです。
エサはグッピー用のフレークフードのみで全く問題ありません。
生エサは水を汚しやすいですし、普段はあまり与える必要はないでしょう。
ただし稚魚にはブラインシュリンプ幼生を与えた方が成長は良くなります。
グッピーは卵胎生メダカなので、卵生魚に比べて繁殖はかなり容易です。
水生生物にとって卵は栄養満点のごちそうですから、他の魚に狙われるのはもちろん、親魚でさえ食べてしまうことも多いですし、だからと言って敵が来ても卵は逃げられません。
そこへいくと、グッピーのような卵胎生魚であれば、産まれてしばらくすると自由に泳いで隠れることも逃げることもできます。
しかも卵生魚に比べて稚魚が大きいので、初期飼料の選択肢も広がるでしょう。
グッピーの中にはアルビノのように稚魚を食べてしまいやすい品種もいますが、たいていは特別なことをしなくても一緒に育ってくれます。
特に親と同じエサを食べてくれるケースが多く、これほど簡単に繁殖の楽しみを教えてくれる熱帯魚はグッピーやプラティなどの卵胎生メダカならではです。
日本に帰化した野生グッピーを確認しに行ったことがあります。
グッピーも熱帯魚ですから冷たい川では暮らせませんが、温泉の排水が流れ込む小川などに生息している場合があります。
やはり卵胎生魚だけあって、温度さえ保たれていれば日本に元からいた魚よりも優位なようで、その川では先住の小魚たちは、全てグッピーに駆逐されてしまっていたようでした。
川にはアフリカ産のティラピアもいましたので、彼らもまた、この川の元の住人を駆逐してしまった大きな原因のひとつと考えられそうです。
今ではもうグッピーしかいないので、ティラピアはグッピーを食べて暮らしているものと思います。
野生グッピーは熱帯魚ショップでよくみられるグッピーとはだいぶ印象が違い、野生種のような短いヒレと目立ちにくいシンプルな色彩をしていました。
ここのグッピーがもとはヒレの長い観賞用のグッピーだったのかどうかはわかりませんが、もしそうだとしたら、原種タイプに先祖返りするというのは予想しうることではありますが、実際にそれが起こっているとなると興味深くもあります。
オスはとても小さく、メスが極端に大きいのも、いかにも野生グッピーといった感じです。
一人の熱心なグッピー愛好家によって密かに作出された驚くほどカラフルな品種が数奇な運命により世の中に広まったことで、グッピーは世界中の人々に広く愛されるようになりました。
もしこのことがなければ、ポエキリア・ピクタなどグッピーの原種とよく似た種と同様に、グッピーはどちらかと言えばマイナーな熱帯魚となっていたかもしれません。
グッピーは今でも多くの品種が作出され続けています。
そして、産まれてくるグッピーの様々なバリエーションの中から好みの色模様を選別して親魚にすることを繰り返すだけで、初心者でも手軽に品種改良を楽しむことができます。
体がメタリックな性質は同時に短い背びれの遺伝子を受けつぐなど、様々な遺伝の法則が複雑にからみあっていますので、理想のグッピーを作り出すことはもちろん容易ではありませんが、偶然に産まれた中に好みの色模様をしたグッピーがいれば、それをある程度までは固定することができるでしょう。
グッピーの繁殖をしているとたくさんに殖えたグッピーの中に、より好みに合う色模様をした個体が育ってくることがあり、こうした色模様はぜひとも次の世代に残したいものです。
方法としては繁殖用の水槽には気に入ったオスを一匹だけ入れて、次にできるだけ多くの健康なメスを一緒にしておきます。
メスは尾びれに模様がなく、十分に丸みのある体型をしたものが繁殖に適しています。
尾びれが大きかったり、体がスマートなメスは避けます。
遺伝には優性遺伝と劣性遺伝があります。
これはペアとなった遺伝子のうち、どちらの特徴が発現するかということです。
美しい色彩や優れた特徴が優性遺伝である場合は問題ありませんが、得てして優れた素質は劣性遺伝であることも多いものです。
この場合、産まれた子は全て親とは似ても似つかないグッピーばかりになってしまいますが、落胆する必要は全くありません。
劣性遺伝は孫の代で発現するからです。
産まれた子同士で掛け合わせると、少ないながらも祖父に近い色模様のグッピーが現れてくるでしょう。
これを繰り返すことで、好みの色模様を固定していきます。